この指導案は、平成19年度・20年度北上市指定研究、平成20年度学校公開の指導案です。 

 本校の研究
○研究主題「自ら学ぼうとする意欲を育てる指導の在り方」
~学び合い活動を通して~
○仮説
 一単位授業の中に、次のような「学び合い活動」の場を設定することにより、自ら学ぶ意欲を育てることができるであろう。
 ① 操作や体験的、作業的な活動の場の設定
 ② 自分の考え、感想、気づいたことや求め方の話し合いの場の設定
 ③ 考え等の交流の場の設定
第3学年 社会科 学習指導案
            日 時:平成20年11月6日(木)
            学 級:3年A組(33名)
            場 所:3年A組
            指導者:古舘 裕之
1 題材・単元名
 公民的分野「第3章 私たちの暮らしと経済」ものの価格の決まり方
2 題材・単元について
(1)教材観
 指導要領には、「国民生活と経済 ア 私たちの生活と経済」に「身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解させるとともに、価格の働きに着目させて市場経済の基本的な考え方について理解させる。また、現代の生産の仕組みのあらましや金融の働きについて理解させるとともに、社会における企業の役割と社会的責任について考えさせる。」とある単元である。さらに、これについて同解説には、「経済活動が、一般的に個人や社会が必要とすることで生活を成り立たせている人間の活動であり、経済活動の意義とは、人間生活の維持・向上にあり、経済は生活のための手段にほかならないことを、身近な経済生活である消費を中心に理解させることを意味している。」とある。この単元は、「市場経済(market economy)」を生徒たちの経験的な活動と関連付け考えさせ、その意義や内容をおおまかに理解させ、消費生活等を通じよりよい生活者として行動できることを気づかせることが大切だと考える。
(2)生徒観
 ~略~
(3)指導観
 この単元で学ぶ「経済活動」については、例えば、地理的分野においての他国との貿易等について学ぶように、小学校の社会や中学校での地理的分野、歴史的分野においてすでに学んできている。また、普段の生活においては家計や消費を中心に、経済活動については、身近に感じられるものもある。
 しかしながら、この単元の「経済活動」の意義や「市場経済」や「自由経済」の基本的な考え方について、具体的に扱うのは初めてである。教科書では指導要領の解説の通り「身近で具体的な事例」を取り上げて、「経済活動」を扱っているものの、実際にはそれぞれの事項についての基本的な「概念」は目に見えないものであり、実社会に出ることが少ない生徒には、その「概念」を身近に感じることは少ないものと考えられる。ゆえに、実際の指導は、目に見えない部分については、説明を丁寧にし、考え方・あらまし・働きなどをおおまかに理解させることが多くなる。この単元における指導要領の解説書でも「気づかせる」、「大きくつかませる」、「考えさせる」ということばが使われているように、また、先述、教材観のように、「経済活動」をあくまで「おおまか」に理解させうえで、その「経済活動」を通してよりよい生活者としてどう行動すれば良いかを考える機会としたいと考える。
 本単元では、発展的な問題に取り組むために、ものの値段の決まり方について2度扱うこととした。「学び合い活動」を行い、「自ら学ぼうとする意欲」を育てたいと考え、あえて、課題解決型の授業を2時間つづけて行うものとした。1時間目は、かつての復習を行い、価格の決まり方について、概念をしっかりおさえさせた上で、課題について自らの考えを持たせる。2時間目である本時は、そのそれぞれの考えをもとに、グループで話し合い活動を行い、まとめさせ、それを全体に発表させ、生徒同士で評価することで課題に対する考え方を深めさせることとした。そこで、課題を解決するにあたって、その過程で、「学び合い活動」の良さが出せ、「自ら学ぼうとする意欲」、社会科的には、今後、社会事象に対して、自ら調べてみたり、考えてみたり、それを表現する意欲につながる授業にしたいと考える。
3 単元の指導目標
【社会的事象への関心・意欲・態度】
・活動に対する関心を高め、それを意欲的に追究し、経済活動について考えようとする。
【社会的な思考・判断】
・社会における企業の役割と社会的責任、社会生活における職業の意義と役割および雇用と労働条件の改善について、多面的・多角的に考察し、個人や企業の経済活動のあり方について、さまざまな立場から公正に判断できる
【資料活用の技能・表現】
・個人と企業の経済活動に関するさまざまな資料を収集し、学習に役立つ情報を適切に選択して活用するとともに、追究し考察した過程や結果をまとめたり、説明したりすることができる。
【社会的事象についての知識・理解】
・経済活動の意義、市場経済の基本的な考え方、生産のしくみのあらまし、金融の働きについて理解し、その知識を身につけることができる。
4 単元指導計画(12時間扱い)
 ①暮らしをみつめて
 ②消費と暮らし
 ③消費者の自立
 ④ものの価格の決まり方
 ⑤市場は万能ではない
 ⑥企業はさまざま
 ⑦会社のしくみと役割
 ⑧資金の貸し借り
 ⑨変わる産業
 ⑩資源をむだなく
 ⑪⑫ものの値段の決まり方2(2時間)・・2/2本時)
5 本時の指導
(1)目標
 ・需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、分かり易く説明するとができる(社会的な思考・判断)。
 ・価格、市場、需要、供給、均衡価格について、分かり易く資料をもとに説明するとができる(資料活用の技能・表現)。
(2)具体の評価規準
評価の観点 A:十分満足できる B:おおむね満足できる 努力を必要とする生徒への手立て
社会的な思考・判断 需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、他の人との違いに気づき、正しく判断ができる。 需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、正しく判断することができる。 具体例をもとに需要と供給と均衡価格の関係について、そのメカニズムを考え、理解させる。
資料活用の技能・表現  価格、市場、需要、供給、均衡価格について、資料をもとに分かり易く説明し、他の人の違いに気づくことができる。 価格、市場、需要、供給、均衡価格について、資料をもとに分かり易く説明することができる。  資料に着目させ、需要、供給のグラフの数量的変化に着目させ釣り合っている場所が均衡価格となっていることに気づかせる。
(3)本研究会の関わり(別紙「社会における付けたい力と学習の構想図」参照)
 ・「学び合い活動」の場の設定
 ・本校の社会科の研究テーマ「自分自身で考え,表現する力を育てる指導の研究~積極的に考える場、活動づくり~」
(4)本時の展開
段階
 
学習内容
 
学習活動
 
留意事項
(◆学び合い活動 ◎評価)
導入



10
 
1 既習事項の確認



2 学習課題の把握
・パワーポイントの図を見ながら、需要と供給と均衡価格について復習する。
 
・パワーポイント2を見せて説明する。


 
  【学習課題】価格のきまり方を、資料をもとに分かり易く説明しよう。  

展開


























30
 
3 価格が決まるまでを具体的に例示。


4 個人でそれぞれの課題にまとめてみよう。
Ⅰ 発展的課題

Ⅱ 発展的課題

5 グループ内の意見の交流
 4のⅠとⅡ
(グループで10分)





6 学級内の意見の交流





 
・パワーポイントの図を見ながら、価格の変動について学ぶ。

・自分で書いてきた考えを振り返る。

Ⅰキウイとマツタケの話

Ⅱ時計の話

・4の課題についてグループ内で意見を交流し、学級内で発表できるようにまとめる。


・ワークシートにまとめ、画用紙に簡単に書く。

・4の課題について、各班2分以内で発表。
(×6=12)

・ワークシートに説明が良かった班を記録する。

 
・パワーポイント3見せて説明する。


・ワークシートを見て振り返させる。

Ⅰ3の問題の続きをまとめる。
Ⅱ 時計の話

◆【グループ内での意見交流】小グループ
①課題Ⅰについての話し合いさせる。
②課題Ⅱについての話し合いさせる。
・それぞれの活動を観察し,アドバイス等を行う。
◎机間指導
◆【学級での意見交流】全体
③課題ⅠとⅡにつてい学級全体で交流させる。
・ワークシートに説明の良かった班について理由をつけて、記録させる。
◎ワークシート
終末







10

 
7 まとめ


8 まとめの交流






 
・各自のワークシートにまとめを記入する。

・まとめを発表する(2~3人)



・ワークシートの回収

 
・まとめを記入させる。
◎ワークシート

◆【学級での意見交流】全体
④まとめで書いたものを交流させる。

・ワークシートの回収を行う。
◎ワークシート
*パワーポイントの資料は、立命館大学松尾匡先生が久留米大学で作られたパワーポイント中学生用に簡単に加工して使用しました。なお、ページは、http://matsuo-tadasu.ptu.jp/です。使用にあたり、先生の許可をお願いし、快く承諾いただきました
*以下は、資料です。

平成20年度『わたしたちの暮らしと経済』評価計画

単元

学習のねらい

社会的事象への関心・意欲・態度

社会的な思考・判断

資料活用の技能・表現

社会的事象についての知識・理解

●節の目標と評価規準






 わ た し た ち の く ら し と 経 済

第1節 暮らしを支える経済

12

★身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解するとともに、価格のはたらきに着目して、市場経済の基本的な考え方について理解する

★現代の生産構造や金融のはたらきについて理解するとともに、社会における企業の役割と社会的責任について考える。

個人や企業の経済活動に対する関心を高め、それを意欲的に追究し、経済活動について考えようとする。

社会における企業の役割と社会的責任、社会生活における職業の意義と役割および雇用と労働条件の改善について、多面的・多角的に考察し、個人や企業の経済活動のあり方について、さまざまな立場から公正に判断できる。

個人と企業の経済活動に関するさまざまな資料を収集し、学習に役立つ情報を適切に選択して活用するとともに、追究し考察した過程や結果をまとめたり、説明したりすることができる。

経済活動の意義,市場経済の基本的な考え方、生産のしくみのあらまし、金融のはたらきについて理解し、その知識を身につけることができる。

●各時間の評価基準

①暮らしをみつめて

1

★毎日の暮らしと経済活動との関わりについて、経済の三主体を中心に考え、財やサービスの供給と消費活動との関わりから経済をとらえ、理解する。

 経済との出会いについて、身近な例を示すことができる。

 経済の三主体について正しく理解し、説明することができる。また、財とサービスの違いが理解できる。

②消費と暮らし

★所得と消費・貯蓄との関わりについて理解する。また、支払いの手段のその問題点について理解する。

 家計から企業・政府へのお金の流れを理解し、支払いのしくみと正しい支払いの手段を判断できる。

 さまざまな支払いの手段とその問題点について、説明することができる。

③消費者の自立

★消費者をめぐる問題点を理解し、その対策について考える。

 自立した消費者になるための手段や、今後の課題について、関心をもって理解しようとする。

 自立した消費者になるために必要なことを考え、自分の言葉で説明することができる。

④ものの価格の決まり方

(1)

★需要と供給と価格の関係について考え、市場経済のしくみについて理解する。

 需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、自分の言葉で説明することができる。

 市場経済のしくみについて理解し、自分の言葉で説明することができる。

⑤市場は万能ではない

1

★寡占と独占の例や公共料金など市場価格で決まらない価格について考える。

 公共料金の意義について考察し、説明することができる。

 寡占と独占、公共料金について、それぞれの特徴や種類を正しく理解することができる。

⑥企業はさまざま

1

★企業のはたらきを通して、資本主義経済のしくみについて理解する。

 資本主義経済と企業のはたらきや種類について、興味をもって理解しようとする。

 資本主義経済を、企業のはたらきや種類、流通のしくみを通して、正しくとらえることができる。

⑦会社のしくみと役割

1

★株式会社のしくみと役割を理解する。また、企業の社会的責任について考える。

 企業の社会的責任について、身近な例をあげながら自分の考えを持とうとする。

  株式会社のしくみと株価の変動について、理解することができる。

⑧資金の貸し借り

1

★金融のはたらきと、銀行の役割について理解する。また、中央銀行としての日本銀行の意義とはたらきについて理解する。

 身近な金融機関をあげながら、金融と銀行のはたらきについて考えることができる。

 中央銀行としての日本銀行の役割について、考えることができる。

 銀行のはたらきを通して、金融、元金と利子の関係などについて,理解することができる。

 日本銀行の役割について理解しすることができる。

⑨変わる産業

1

★日本の産業構造の変化と、経済のソフト化・サービス化やグローバル化について理解する。

 資料から、産業構造の変化について読み取り説明することができる。また、国境を越えるさまざまな経済活動について、事例を探して説明することができる。

  経済のソフト化・サービス化の意味を理解し、産業構造の変化を説明することができる。

⑩資源をむだなく

1

★食料との関わりから農林水産業の役割について考える。日本の環境問題への取り組みについて調べ、循環型社会の実現について考える。

  農林水産業の役割について考え、食料や環境問題について、さらに深く追究しようとする。

 日本の資源・環境問題、循環型社会の実現について、自分の考えを発表することができる。

⑪⑫ものの価格の決まり方(2)

★商品の価格の決まり方について、身近な生活の中から具体的に考え、他の人に分かり易く説明できるようにする。

 需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、正しく判断することができる。

 需要と供給と価格の関係について、そのメカニズムを考え、分かり易く説明することができる

 

*教育出版「中学社会「公民」」を使用。この計画表も同出版社の計画を参考にし、本校に置き換えたもの。
教育出版年間指導計画はちらから

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